::: 再訪 :::
先月の冬休み中、生後2ヶ月〜10才までの幼少期を過ごした町を、
30ウン年ぶりに訪ねてみました。
記憶の中では長い間ずっとおぼろげであいまいだった数々の断片が、
いろんな懐かしい風景を再び目にすることで、ちゃんとリアルなも
のとして実感できたりして、なかなか楽しかったです。
びっくりしたのは、道も、陸橋も、通っていたピアノ教室も、小学
校の建物や校庭、給食室、お祭りをやった神社も、いろんなものが
記憶よりもずっと小さくて、道幅は狭く、長さもぜんぜん短かくて、
スケールがみんな半分くらいだったことです。町全体がこじんまり
としていて‥、何だかちょっぴり、ガリヴァーのような気分でした。
それから特に面白かったのは、あちこちを実際に歩いていると、自
分が体験したことの記憶と一緒に、身体感覚の記憶もよみがえって
きたことです。
たとえば、町なかを子供用の自転車でフンフンとこいでる感じ。。
商店街で自転車を押し歩きながら、その周りに漂っていたざわめき。
毎回、ドキドキと緊張しながら渡っていた、大きな国道の交差点。
小さな工場の機械油の匂い、鉄錆の色、キーンという耳をつんざく
工具の音。。
かわいいノートやシールを買った文房具屋さんのインクっぽい匂い。
工作のチューブ糊が少なくなってくる時のぺこぺこ感。
よろずやの店先に並べられたカラーなわ跳びの色。
冬の、なわ跳びの息づかい。。
ともだちの長い髪と、赤いほっぺた。
ゴム跳びのゴムが、素足に触れる感覚。
足下の、白いハイソックス。
側溝に妙に落ち込んでカーブになってる小学校前の歩道で、
ちょっと油断するとひっくり返りそうになる足裏の感覚。。
いつも寄り道していた金魚屋さん、
大きな水槽のブーンというポンプの音、藻のような匂い。
アスファルトの上を、ジャージャー鳴らして走るローラースケート。
よじのぼった金網フェンスの手触り。
ブランコに乗って、ぶんぶんと立ちこぎしながら受ける風。。
よくお世話になった小児科の匂い。
そこで出されたオレンジ色した甘いシロップ薬。
春の田んぼで、レンゲの花の冠をつくった時の柔らかい茎と花びら。
稲刈り後の切り株を、一個ずつクシュクシュっと踏んでいく感触。。
などなど‥。
もちろん、今はもう無くなってしまったり、すっかり姿かたちを変
えてしまっていた所もありましたが、当時その場所で、小さい身体
でめいいっぱい元気に動き回っていたことをまた感じられたこと、
幼い時に味わった感覚そのものに再会できたことが、何よりすごく
いとおしかったです。