ゆるむるぅむ *monde

 

+ dans une ruelle de Meknès +

 
再び、モロッコの大地へ‥。バスはまず Casablanca_カサブランカから、首都 Rabat_ラバトを経由し、そこから丘陵地帯を抜けて幹線道路で東に向かって走っている。
 

そういえば、来る時の東京から経由地アムステルダムまでへの便で、降りる間際になって少しだけ話した隣の日本人男性は、アムスからの乗り換えでルーマニアに行くと云っていた。ルーマニア! 映画でしか見たことがないけれど、どんなところだろう‥? 興味を持って聞いてみたが、彼も初めてらしい。仕事か旅行かと思いきや、なんでも東京でルーマニア人女性と暮らしており、今回、彼女の家族に初めて会い、そして結婚の許しをもらいに行くのだとか。その彼女はすでに実家へ行って彼の到着を待っているのだけど、仕事もそんなに休めないから、あわただしく数日後には2人でまた東京へ戻る予定とのこと‥。
 

へぇ〜そうなんだ、ルーマニア人にはまだ会ったことないなぁ、と云うと、それが意外だったんだけど東京には結構いるんだよね、コミュニティもあって‥なんてことを話してくれた。そうなのね、で、どう、緊張する?と聞いてみたが、決意もがっちりと固まっているらしく、いや、まぁ行くしかないからね!とさらりと返ってきたっけ? それぞれに人生があるなぁ‥と思いつつ、空港ターミナルで別れ、自分の乗り換えゲートへと進む。
 
 

深夜に降り立ったカサブランカでは、前回のようにまず一晩だけ安ホテルで過ごし、翌日、バスでそこから200km東に位置する古都 Meknès_メクネスへと向かう。実のところ、さらに50km行けば、古都としてはもっと有名な Fez _フェズ‥なのだが、そこはかなり大きな街。人混みや喧騒を避けたかったし、迷路のように複雑な道をガイドなく歩く自信がなかったし、たとえガイドと一緒だとしても、そういうのには魅力を感じていなかったから‥。今回の長い旅路の最初の中継地点として手前にあるメクネスを選んだのは、それよりのんびりと古い町並みや地元の人たちの生活を垣間見たり、何より自由に歩きたいと思ったからだ。
 

さてメクネスに着いたのは、午後何時頃だったろうか? バスターミナルから目的のメディナ(旧市街)までは、新市街を抜けて、そこから広々とした渓谷の上にかかる橋を渡って‥と実は結構な距離をてくてくと歩かなければならず、睡眠不足と旅の疲れと荷物のずっしりとした重さが身にこたえて、すでにもうクタクタだった。
 

とりあえずガイドブックで女性におすすめの安宿、とあったホテルにチェックインしたはずだが、このホテルのことも、映画館のとなりで黒っぽくて細長い入り口‥ということしか覚えていない。やはり、疲れている時には脳みそがあまりよく働いていない‥という証拠だろう。そこでまずは一旦少し休んだが、そもそもこのメクネスも、立ち寄ったこの日一泊のみの予定だったし、ここまで来て何も見ずに去るわけにもいかないので、その後で散策に出かける。
 

まず緩やかな坂道を登るようにしてゆくと広場に出る。そこに緑と青の細かくて繊細なモザイクで飾られた大きなマンスール門がどーん、とそびえている。その門を抜けてまたすこし行くと、高く乾いた土色をした壁に挟まれた風の道と呼ばれる王宮への道がある。元気と時間があれば、その素っ気なくほぼ誰もいないまっすぐの道も歩き進められたかもしれないが、無理せず、また広場へと戻って、反対方向のメディナの中へと侵入するようにして歩を進める。
 

くねくねと細く入り組んだ路地、気負わずにゆっくりゆっくりと進む。小さな雑貨店や工房があった。路地に出て長い糸を引っ張る人、糸の先を視線で追うとその先には戸口の暗がりの中でそれを紡いでいる人。生地屋さん、パン屋さん‥。メクネスのメディナはこじんまりとしているので、少し迷ってもそこまで心配しなくてよさそうだ。
 

気の向くままに歩いて、カスバのけっこう端のほうまで来たかな‥と思ったころ、そんな細い道でも全くおかまいなしに、小さなこどもたちがサッカーボールを蹴り合っていた。おっとっと‥とぶつからないように、微笑みながらそこを抜けようとすると、その中の10才くらいの男の子がまじまじとこちらの顔を覗き込んできて、何か話しかけてくる。手には世界のサッカー選手のカードの束。
 
「どこから来たの?」
 

すぐに「ジャポン」と答えると、ババババーっとカードを繰る。そして手をパッと止めて見せてくれたのは、カズだった。 「ほら.. MIURA!」と云いながら、とってもかわいい笑顔! 「〇〇も持ってるし、△△だって!」とブラジルやヨーロッパの有名選手のも見せてくれる。「 いいね。じゃぁ NAKATA は ?」と、当時活躍中だったので一応聞いてみたが、ないらしく、首を振ってちょっと残念そう。その時、すぐ横のレストランから父親か、近所のよしみだろうか? 男性がその子に何か注意したようだ。するとその子たちは笑いながらタタタターっと散らばっていった。でもその男性もこちらを気遣っての様子で本気で怒ったわけじゃない。彼とも「Au revoir」と視線を交わして通り過ぎる。
 

あ、でもそうだ! 夕食はあそこでとってもいいかもなぁ‥と、少しした後で思いついて、わざわざもう一度そのレストランへ戻ってもみたのだが、外にあったメニューを見た感じではどうもピザやパスタのようだったので、うぅーん、ここでイタリアンてのもなんだかちょっとね‥。
 

‥とその夜は結局、アラビアパンでできたサンドイッチを食べて終えるのだった。